デイサービス

場面3.デイサービス(爺さんの話) ― よい仲間 ―

「わしは、この前、わしの財産は全部女房にやるということを、ここに書き込んだ
ことがある。

わしには子供はない。今暮らしている子供は女房の子じゃ。女房は再婚なのじゃ。
だから、わしが死んだときは、わしの遺産は女房とわしの兄弟にいってしまう。そこで、
全部女房にやる、というような遺言を書いておこうと思ったのじゃ。

そんなことを書き込んだやさき、一人のおばあさんが話しかけてきた。あれはデイ
サービスに行ったときじゃ。風呂から上がってくつろいでいると、おばあさんが近づいて
きて、“あたしゃ、あんたのフアンになってしまった”というのじゃ。フアンなんてハイカラな
言葉を知っておる。

“あんたの遺言の話、面白かったよ”というのじゃ。そこで、わしも聞いてみた。“ばあさんは、
何をやってる人じゃね?”すると、“あたしゃ、川柳をやってるんじゃ“という。この前、この
ページに川柳を書き込んだあの川柳ばあさんだったのじゃ。

ばあさんには子供も孫もいるらしい。しかし、相続のときにもめないように、わしに
ならって遺言を書いておくという。それはいいことじゃ。これで、将来お互い安泰じゃ。

また、このデイサービスで会って、いろんな世間話でもしようじゃないかね、といって
別れたが、今度いつ会えるのか楽しみじゃ」