遺言の落し穴

場面7.遺言の落し穴(爺さんの話) ― よく確認を ―

「わしは以前、ここに遺言について書き込んだ“遺言じいさん”じゃ。

同じように、川柳を書き込んだ“川柳ばあさん”が、この前、遺言を書いたっていうんで、
見せてもらった。

「あたしゃの財産は、長男に相続させる」と書いてあって、日付、名前、そしてハンコが
押してあった。

ううむ、よく書けているわ。ただ遺言を書くにあたって注意をせなけりゃならない点がある。
きょうは2点ばかり話そうかの。

1つは、ばあさんの遺言のように、必ず「相続させる」と書くのじゃ。それを、あげるとか、
やるとか、贈与するとか書いたら、相続人の全員で遺言の手続きをせにゃあかんことに
なって面倒じゃ。

2つめは、必ず遺言執行者を書いておくことじゃ。これは、遺言の手続きをする者をいう
のじゃ。ふつうは、遺言によって財産をもらう人がなることが多いのう。

実際、この遺言執行者を書いてないのがいっぱいある。ばあさんの遺言書にも書いて
なかったぞい。

これが書いてないと、手間がかかるが、裁判所に遺言執行者を選任してくれって言うし
かない。

遺産とか、相続人間に争いはないかなど、いろんなことを聞かれるんで、素直に答える
ことじゃ。

このように、遺言を書いたときには、きちんと書けているかどうか確認することが必要じゃ。
なんなら、わしが見てやってもよいぞ」