遺言の必要性

場面1.遺言の必要性(爺さんの話) ― 再婚夫婦 ―

「わしたち夫婦は、再婚同志なのじゃ。女房には子供が2人おって、孫までおる。
わしには子供は1人もいないのじゃ。この際、わしが死んだときのことを考えて遺言を
しておこうと思う。

わしは女房のことをいとおしく思っている。そこで、わしが死んだら、わしの財産を
すべて女房にやりたいと思っている。わしの財産といっても、小さな家といくらの
貯金があるだけじゃがな。

もし、遺言がなかったら、わしの遺産は兄弟に分け前がいってしまう。兄弟が憎い
わけでもないが、それなりに生計を立てておる。したがって、いちばん世話になって
いる女房にやるのが筋ではないかと思う。そうすれば、その孫も少しはいい思いが
できるじゃろう。

わしが死んだとき、誰がわしの遺産を相続するかは、ふつう、相続人らの話合いに
よって決まるらしい。しかし、女房とわしの兄弟たち、ふだん付き合っていないので、
うまく話合いができるか心配じゃ。

そこで、あとでもめないように、自分で遺言を書いておきたいと思っておる。わしの
財産である家と貯金は、すべて女房にやるというように、自筆で書いておけばよい
のじゃ。そして、それを自分で保管するなり、女房に預けておけばよい。

わしのように、子供がおらず、相続人同志がもめる心配のある人は、遺言を書いて
おけば、これから先安心じゃ。これが最後の女房孝行にもなるというものじゃ」