わたしはこうして合格した!

-左近寺勲の○秘合格作戦!-

左近寺勲は毎週、答案練習を受けていても、何かしら物足りなさを感じていた。

それは、自分がいままで何度も合格できなかったので、心が消極的になっており、勉強に対する自信が
もてなかったためである。

しかし、そんな左近寺に自分の勉強に対する考え方、ひいては人生観を180度変えるような出来事が
起こったのである。

それは、G学院の園田ゼミという弁護士、園田宗一郎が主催するゼミを申し込んだときのことである。

園田ゼミの面接試験の日、弁護士の園田が一人一人に質問する。左近寺は一番前に並んでいたので、
一番先に質問された。

「君は、合格したら何がしたいんだ」

左近寺は、ふだん合格した後のことは少しも考えていなかったので、あわてながら、
「そのようなことは何も考えていませんが、合格してから具体的に考えてみたいと思います」
と、答えてしまった。

それを聞いた園田は、
「将来の目標が持てない人間は、永遠に合格することはない!」

と言って、彼の履歴書に大きな×印をつけた。もちろん、失格という意味である。

ショックだった。何か重いもので頭をなぐられたような気持ちだった。目の前が真っ暗になった。

嘘でもいいから、どうしてもう少しましな答ができなかったのだろう。もうG学院なんかには二度と行くものか。
左近寺の頭の中は、後悔でいっぱいだった。

園田ゼミの選抜試験には不合格になったけれど、その後、園田弁護士の言葉が彼の頭の中に残り、
ことあるごとに、彼に語りかけてきた。

その言葉は、いつか、
「将来の目標を持て! 目標を持てば必ず合格する!」
という言葉に、変わっていた。

左近寺はその言葉にはっと気づき、目がさめるような気持ちになった。彼が今まで合格できなかったのは、
将来の具体的な目標がなかったからだ。具体的な目標を持てば、必ず合格できる。

そう考えた彼は、
「予備校の講師になり、日本一の司法書士になる!」
という目標を掲げた。

それからというもの、左近寺の勉強に対する態度が一変した。勉強に対して自信がわき、合格は目標達成の
ための一手段にすぎないと思うようになった。

今まで遠くにあった合格が、すぐ手の届くところにあるように思えてきた。また、すでに合格している自分の姿を
頭の中に描くことによって、毎日の受験勉強が楽しいものになった。

合格はすぐそこにあるように思えてきた。7月の試験が過ぎれば、彼は当然合格していると、思うように
なってきた。

園田弁護士との出会いをきっかけに、左近寺は精神的な面を非常に重視した。

すなわち、長年勉強している人がなかなか合格できないのは、精神的な面に欠陥があるのだ。実力は
十分あるのに、試験ではあがってしまうとか、冷静な判断ができなくなってしまう。

そこで、まず試みたのが園田弁護士の「成功あるのみ!」というカウンセリングに申し込んだことである。

カウンセリングの日、園田に、
「わたしは精神的に弱いのですが、どうしたら強くなれるでしょうか」
と、自分の悩みを打ち明けた。

すると、園田は、
「任しておきなさい」
と言って、精神的に強くなるいろいろな方法を、彼に教えた。

それは、そのまま試験に合格できる方法にもつながるものである。その中のいくつかを紹介すると、

1、具体的な目標を持て!
   将来、自分が何をしたいかという具体的な目標を持つこと。受験生の当面の目標は試験に合格することだが、
   合格してから、自分が何をしたいかまで、考えること。

2、目標を紙に書け!
   目標を紙に書いて、机の前に貼る。そうすれば、いやでも自分の目標が机に向かうたび目に入り、脳裏に
   焼きつく。目標を紙に書くことによって、常に目標を意識することになる。

3、期限を区切れ!
   こんど試験に必ず合格する、というように、期限を区切ること。2年後、3年後の試験を考えていては、意味が
   ない。期限を区切ることによって、目標に対する意欲も高まる。

4、常に自分を動機づけよ!
   自分の目標を常に自分に言い聞かせる。これには、腹の底から大声を出すのがよい。小高い丘に登り、
   あるいは河原で、
   「いくぞーッ」「やるぞーッ」「合格―ッ」
   と、腹の底から叫ぶ。
   声がかれても、のどから血が出ても叫び続ける。このように、自分自身に言い聞かせることによって、やる気が
   湧いてくる。

5、合格した自分を常にイメージせよ!
   合格した自分の姿を、ありありと頭の中に思い浮かべる。自分が合格し成功した姿を常に頭の中にイメージ
   すれば、必ずその人はイメージどおりの人になる。

6、プラス思考をせよ!
   人間は弱いもので、放っておくと考え方はマイナス思考になっていく。それを意識的にプラス思考に転換
   させるのだ。

   自分の身の回りに何が起こっても、それらはすべて自分を成功させるために起こっていると考えるのだ。

   これらは、園田弁護士の考えのほんの一部であるが、少なくとも今までの左近寺に欠けていたものばかりだ。

左近寺はこれらのことをすべて実行した。

そして、これらを実行することによって、消極的な人間から積極的な人間に変わっていくのを感じた。
自分自身の中に自信が生まれ、不安、恐れがまったくなくなった。

そして、その年、左近寺勲は見事、司法書士試験に合格したのである。