パソコン遺言

場面5.パソコン遺言(爺さんの話) ― それは無効じゃ ―

「わしは、以前、このページに遺言について書き込みをしたことがあるので、最近は
“遺言じいさん”と呼ばれておる。

そのわしが、この前、うちのまわりを一人で杖をつきながら散歩していたときのことじゃ。

わしの後ろから、乳母車を押して足早に追いついてきた者がおる。追い越しざまに、
わしの顔を見ながら、“あんた、遺言じいさんじゃね”という。相手の顔を見ると、これまた、
川柳を書き込んで有名になった“川柳ばあさん”だったのじゃ。

“あたしゃ、遺言を書いたんで、あんたに見てもらおうと思ってやって来たのじゃ”という。
それはいいことじゃ。早速、うちに寄って、遺言を見せてもらうことにした。

“あたしゃ、字が下手だから、孫にパソコンで打ってもらったんじゃ“ ばあさんはきれいに
印刷された遺言書を広げた。

それを見て、わしは思わず大きな声を出した。“だめじゃ!パソコンで書いた遺言書は
無効じゃ。下手でもいいから自分で書かなくちゃ、自筆の遺言にならんのじゃ”

自分で書くから、自筆の遺言というのじゃ。これをパソコンで打ったら、誰が書いたのか
わからん。自分で書かなくちゃ無効なのじゃ。

遺言というのは、簡単なようでなかなか難しいものじゃ。わしも遺産を女房にやるため
遺言を書いたが、いい勉強になった。このページのいろんなコラムを読んだおかげで、
脳みそが若返ったわ」