新四国88ケ所霊場は、万延元年（1860）新田郡阿久津村（現在の太田市阿久津町）の白石栄左衛門が
四国の88ヶ所霊場を現在の太田市、伊勢崎市などに写し創設したものである。
白石栄左衛門は米穀や肥料、日用雑貨の販売、蚕種の輸出、中でも油販売を中心した商売で大富豪と
なり、油長者という異名を持っていた。
一方、各地の寺院や神社、また多くの霊場を巡り、さまざまな奉納をしている。 特に大光院や冠稲荷神社、
榛名・伊香保神社の県内はもちろん、伊勢神宮や琴平神社などに大灯篭を寄進している。
このような信心をもとに、自分の菩提寺を一番として新四国霊場の発願をしたのである。
この新四国霊場は一時衰退したものの、明治27年（1894）に、彼の娘婿の庫之輔が霊場を復興している。
さらに、昭和7年（1932）、太田市沖野町の延命寺（60番）の住職、斎藤観良によって弘法大師1100年
御遠忌を記念して再興されている。
筆者は数少ない資料を頼りに、88ヶ所すべての霊場の納経所を調べ上げ、 全寺のご朱印が揃うことを
確認した。そこで、新四国の存在を多くの人たちに知ってもらう目的で、この案内書を作成した。
もともと四国霊場めぐりは、弘法大師を信仰し、ゆかりの地を巡礼することであり、88という数字は諸説あるが、
煩悩の数や男女の厄年の合計に由来するという。
往時を偲びながらこの新四国の霊場を巡ると、おや、このような場所にこんな立派なお寺が……などと感嘆
するほど、意外な発見に出会うときがある。
まさに新四国の巡礼は、新しい郷土の発見の旅である。
これを機に、新四国88ヶ所の巡礼者が増え、より多くの人々が郷土の良さを再認識していただければ幸いで
ある。
