酔った勢いで

質問2:酔った勢いで、約束をしたら有効なの?

このページを読んでいる男性諸氏の中には、なじみのバーやスナックによく行くという
人もいるでしょう。そのバーでなじみのホステスに、酔った勢いで、
「俺とつきあってくれたら、あの家をやるよ」
と約束なんかしたりしませんか。そのうえ、その場で、書面にサインとハンコ。

翌日になれば、あのときは酔っていたから本気ではなかった、と言い訳をします。しかし、
ホステスの方は本気にします。いつになっても家をくれないので、そのときの書面を
証拠にして、裁判所に訴えます。

さて、この裁判、どちらが勝つと思いますか。

男性にとっては、酔った酒の上でのこと、本気にするほうが悪い、と主張するでしょう。
また、女性にとっては、たとえ酔っていても約束をしたのだから、履行してほしい、この
とおりサインした書面まである、と言い張るでしょう。

では、裁判所はどう判断するでしょうか。

これと似たような裁判例が昭和8年にありました。それによると、1審、2審は女性の
言い分を認めました。しかし、大審院(最高裁)は、「酒の席での約束であって、それを
真に受けるほうが悪い。男性が勝手に履行するのだったよいが、裁判にまで訴えて
請求することはできない」と、女性の言い分を却下し、男性の主張を認めました。

われわれ司法書士も毎日の業務の中で、土地や建物に関する契約書を見ますが、
その書類が真意で書かれたものか、また、本人によって書かれたものか、常に注意を
払っているのです。